音楽教育あらかると
<音楽教育>
・リトミック(ダルクローズ・ソルフェージュ)
概要:スイスの音楽教育家であり作曲家であるエミール・ジャック=ダルクローズ(1865-1950)によって創案された音楽教育法。
特徴:「ソルフェージュ、即興、リズムのギムナスティック」を3本柱としているが、リズムに着眼し音楽教育に身体運動を取り入れた点が特徴である。
日本:新渡戸稲造の紹介でダルクローズから学んだトモエ学園の小林宗作が、最初に学校教育の現場に輸入した。また、小林以外にも舞踏家の石井漠などがスイスで直接ダルクローズから学んでいる。
備考:教育の実践地は主にドイツであったが、アメリカでもおおいに歓迎され、マーセルなどの音楽教育者が関心を寄せていた。スイスの本校には著作に加えて貴重な本人の映像資料も残っている。
・コダーイ・システム(コダーイ・メソッド)
概要:ハンガリーの民俗音楽学者であり作曲家であるコダーイ・ゾルターン(1882-1967)によって創案された音楽教育法。
特徴:民謡やわらべうたなどの民俗音楽を音楽教育の導入期に用い、そこから西洋音楽(調性音楽)の理解へと発展させることが特徴である。
日本:音楽教育家の羽仁協子により幼児教育の現場で最初に導入された。また、ハンドサイン(カウェンの改良版)を用いた歌唱法も特徴的であり、幼児教育だけでなく合唱指導に用いられることが多い。
備考:リスト音楽院の友人であるバルトークと共にハンガリー民謡の収集に尽力し、共著の民謡集も出版している。同じくハンガリーの作曲家リゲティは、ブダペスト音楽院でコダーイに学んでいる。
・オルフ・シュールベルク
概要:ドイツの作曲家であるカール・オルフ(1895-1982)によって創案された音楽教育法およびその教材となる楽譜集。
特徴:ダンスや身体表現など「音と動き」の教育に加え、「ことば」を加えた教育体系が特徴。遊び歌などを導入に用いた教育を基本にしている。
日本:武蔵野音楽大学の学長であった福井直弘が、国際音楽学会で出合ったシュールベルクを持ち帰った。S.37(1962)には助手であり実践者であったケイトマン女史とともに来日している。
備考:シュールベルクはラジオ放送の子どものための音楽番組から生まれた。オルフ楽器という教材も開発され、貴重な実践の映像資料も残っている。オルフはダルクローズの教育に関心を寄せていた。
・スズキ・メソード
概要:日本のヴァイオリニストである鈴木慎一(1898-1998)によって創案されたヴァイオリン教育および器楽教育法。
特徴:たくさんの名曲や名演を聴くことにより音楽的な耳を育て、演奏能力を伸ばす教育が特徴。「才能教育」(英才教育ではない)とも呼ばれる。
日本:※割愛
備考:アジアでは普及しているが、ヨーロッパではハンガリーのヴァイオリニストであるヨーゼフ・シゲティが百貨店の既製服を集めたようなもの、と批判を述べている。アメリカでは高い評価を得ている。
<ピアノ教育>
・ペース・メソッド
概要:アメリカの音楽教育家ロバート・ペース(1924-2010)によって創案された、生涯学習スタイルのピアノ教育法。
特徴:演奏を把握する「知的理解、表現する為の感性、演奏技術」の調和と、西洋音楽の基本的なパターンを知る学習を基本に置いている。
日本:ピアノ指導者の神保洋子によって、日本語訳された教材がS.58(1983)に音楽之友社より出版される。神保はN.Y.でペースに出会い、メソッドの検証実践としてN.Y.で音楽教室を開講している。
備考:グループレッスンのため、キーボードとヘッドホンが用いられる場合が多い。ペースはグレン・ミラーのファンであり、教材もクラシックに偏らない。ジュリアード音楽院の入学に際しては特待生であった。